ディベートを学ぶとどんないいことがあるの?効果&技術を9点に分けてご説明
ディベートを学ぶと何かいいことがありますか?
やっぱり自分の意見が言えるようになることでしょうか?
論理的に物事を考えられることでしょうか?
逆にディベートを学ぶデメリットってありますか?
全部お応えします。
巷のディベート本の内容を参照したのではなく、即興ディベートワークショップの活動を通じて
- 自分で実感したこと
- 参加者様の声
などを反映させています。
ややまとまり感がないかもしれませんが、ご容赦ください。
注:このページでは、副業を題材にした例文をいくつも載せておりますが、ディベートを理解するためのサンプルです。即興ディベートワークショップ参加者様の参加者様の中で副業に興味がある方や副業実践者の方が多かったので、あえて副業ネタをチョイスしました。決して、副業を推奨しているわけではありません。
基礎スキル
1.聴く力/傾聴力
ディベートの試合では、相手の主張を理解してから、その中身を吟味して反論をしていきます。
的確な反論をするためには、何よりもまず相手の議論を理解するところからスタートしなければなりません。
極論をいうなら、相手の発言が意味不明であっても、
- 何を言ったのか?
- 何が言いたかったのか?
- 何を言っていなかったのか?
を理解していく必要があります。そのため、ディベートの試合では、伝えるよりも「聴く」ことのほうが求められます。
カウンセラーのように相手の言葉にじっくりと耳を傾けながら、あいての主張をひとつひとつ論理に落とし込んでいく必要があります。このようなスキルを「論理的傾聴力」と呼んでいます。
論理的傾聴-相手の思考を読み取る聴く3つのポイント
2.思考力/考える力
いくら上手に聴けても、相手の主張に飲まれたら、「はい、そうですね」で終わり、反論はできません。相手の意見をいったん受け止めてそこから考えなければなりません。
例えば、「子供の頃から英会話を学べば、将来はグローバルで活躍する人材になれる」と教育界の人は主張しますが、これはどの程度正しいでしょうか?何となく正しそうなことに流されず、そのひとつひとつに対して「それはどの程度本当なのか?」「実際はどうなのか?」「真逆のケースもあるのでは?」とそこから一歩引いて自らの頭で考えていくことが求められます。
【1分でわかる】トゥールミンモデルの構築方法-ディベートWS
3.編集力/まとめる力
様々なの情報をひとつのシナリオにまとめていく力です。スピーチには必ず時間制限があるため、自分の持ち時間を上手に使っていくことがディベートの試合では求められます。コンパクトに無駄なく、時間を有効活用するようなスピーチの仕方が望ましいです。
このような話し方をすると、聴いている側もいったい何が言いたいのか?がわからなくなり、たとえ内容がよくても伝え方でマイナスポイントになります。
一概には言えませんが、もしも副業を解禁すると、みんなが副業をして、平日も休日も働いくような日々になって、忙しくなって、平日に出社しても仕事ができなくなるため、最後は全部だめになるような気がするのではないでしょうか?
聞き手が知りたいのは、何が言いたいのか?なぜそうだと判断したのか?具体的にどういうことか?の3つです。
このような話し方を身につけるために、お勧めしているのが、主張、理由、具体例、結論です。
副業を解禁するリスクは2つです。
1点目:
主張:働く時間が増える
理由:平日は会社で働き、休日も働くため働く時間は増えます。
具体例:毎週土日に12時間働いたと仮定すると、会社の労働時間と合算して200時間を超える。
結論:働く時間が確実に増える
2点目:
主張:パフォーマンスが低下する
理由:疲労が蓄積する
具体例:実際にわが社でも休日出勤したら翌週のパフォーマンスが低下する社員が多かったことが判明した
結論:休日に働くと平日のパフォーマンスが低下する
このようにディベートの試合をすると、必然的にスピーチの意図を理解して、無駄を省く形で的確に主張を行えるようになります。ディベートの試合をすると思考がそっち寄りになります。
4.表現力/伝える力
ひとつの言い方について様々な言い回しができるようになります。瞬時に言葉選びができるようになります。これを表現力とも呼んでいます。
先ほどの2点目も表現力を意識するとこのような言い回しができるようになります。
2点目:
主張:仕事の質が下がる
理由:休日の「疲れ」が翌日に影響するから
具体例:実際にわが社でも休日出勤したら翌週に疲労感を感じていたため、書類の書き漏れや入力ミスが多かったことが解った。
結論:休日に働くと翌週に影響する
このようにディベートをすると、普段から自分がどのような「伝え方」をしているかを意識するようになるため、様々な言い回しのパターンが作れるようになります。
即興ディベートワークショップ参加者様の中でもよくいただく声が、「伝え方を変えたら、相手の反応が大きく変わった」です。言葉選びは盲点になりがちですが、非常に大事だったりします。
私がウェブライティングなどを学んでいるため、その影響もあるかもしれません。必ずしもディベートによるものとは保証しかねます。
5.傾聴〜表現までの一連の動作
5点目は、傾聴、思考、編集、表現をひとつの流れで学べるということです。特に、反論のパートでは、相手の議論を聴いて、それに対して盲点を探して、自分の議論を組み立てて、スピーチを行います。
コミュニケーションやプレゼンテーション講座、もしくはロジカルシンキング講座、カウンセリングの講座に参加したことある方は、上記でお伝えした「聴く」「考える」「まとめる」「伝える」いずれかのトレーニングを重点的に受けると思います。私自身、そのような講座に参加をすることが多く、ディベート講座よりも優れた講座はたくさんあります。
対してディベートの利点は
- 「聴く」「考える」「まとめる」「伝える」の動作を一連の流れで身につけられる
- 4つのうちどれか1つでもゼロになってしまうと、全てがゼロになってしまう
ということです。
ディベートは決して万能ではございませんが、ディベートを通して、この一連の動作を流れで学べる点では本当に優れていると自分でも思います。
この流れを身につけていただき、後はあなたがあなたなりに自分の足りないと思っている部分を伸ばしてくれるのが理想ですね。
ディベートスキル応用編
ドンドン行きます。
応用編では、実際にディベートだからこそ学べる特定の思考モデルについてお伝えしていきます。もしかしたら、退屈になるかもしれませんが、なるべくイメージできるように書いていくのでお付き合いください。
6.複眼思考
複眼思考とは、物事を様々な角度からとらえたり考えたりすること、です。
例えば、「副業」というキーワードがここにあるとします。
通常、会社で働いている方であれば、副業=休日にもうひとつ別の仕事をしてお小遣い稼ぎをすること、だと考えるかもしれません。ですが、ここで複眼思考をもつとこのように考えることができます。
- 副業の定義
-副業とは、空いた時間の就労、隙間時間に自力で稼ぐ方法を身につける
- 従業員視点の副業
-休日に別の仕事をして副収入を得ること、もしくはその取り組み
- 会社視点の副業
-従業員の健康上の問題、会社に損害を与えるようなことはしないか
- 政府/行政の視点
-税収が増えるのは嬉しいが、保険や税法上の手続きが追い付かない
- 社会全体の視点
-各自が好きなことを仕事にして自己実現ができるのなら、それは歓迎
- 副業斡旋業者の視点
-会社勤めの人が副業市場に参加をすることで自分たちが潤う
など、このように「副業」ひとつでも様々な立場から検証する機会があります。
結果としてひとつの視点に囚われず、複眼的に物事を考察できるようになります。
視点が多いのが必ずしも良いことではありません。たとえ視点が狭くても、それについて深く掘り下げて考えることも、同じくらい大事です。
広い視野で物事を捉えることは大切ですが、ディベートはその訓練をする場があります。
7.弁証法的な思考
弁証法的な思考とは、ヘーゲルによって定式化されたある物事が正しいという視点と、その「正しい」という判断は間違いかもしれない、という逆の視点を持つこと。
例えば、もしもあなたが、「好きなことを仕事にするのが素晴らしい」とお考えでしたら、同時にこのような視点を取り入れてみます
- いや、個人の好きと仕事を結び付けるのはどうかと思う(以下、理由)
- 消費者としての「好き」なのか、働き手としての「好き」は一緒とは限らない
- 「好き」を仕事にすることで、「好き」が嫌いになる可能性もあるのでは?
と、このように普段から考えていることに対して、「必ずしもそうではないのでは?」「逆の考えもありうるかもしれない」という視点を持っておくことです。
結果、自分の中にある「思い込み」や「思考の偏り」がなくなり、より客観的に立場で物事を考えられるようになります。ディベートでは、ひとつの問題に対して必ず肯定側と否定側の視点から検証するため、この弁証法的な思考が身につきます。
8.メリット&デメリット思考
ディベートの試合では、あるテーマに対して必ずメリットとデメリットの両方の視点をもって議論に取り組みます。相手側の視点も取り入れているから真逆の主張を受けても冷静に対処ができるようになります。
例えば、日本政府は副業を解禁するべきであるというテーマでディベートをすることになったとします。
この場合、必ず副業をすることによるメリットとデメリットの2つを用意します。どちらか(支持する考え、得意な論調)ではなく、必ずメリットとデメリットの両方で考えます。
そして、もうひとつ。ディベートには、このメリットとデメリットを論じるさいに、聞き手に確実にわかってもらえるような伝え方があります。これをメリット・デメリットの3要件といいます。紹介します。
■メリット=問題解決(3つの論証要件)
- 現状に何らかの問題があることを指摘する
- その問題は解決するされるべきだと論じる
- テーマ実行による解決の手順を述べる
■デメリット=弊害発生(3つの論証要件)
- 弊害が発生する一連の手順を示す
- その弊害が、本当に「害」であると論じる
- 現状でその弊害はないことを証明する
この3要件に関しては、問題解決や弊害発生を論じるうえで非常に優れたプレゼンツールだと考えております。もしもあなたが聴衆に対して「こうしましょう」「これをしてはいけません」と伝えるときに必ず役に立ちます。
ディベートをする、しないに関わらず是非とも覚えてほしい考え方のひとつです。
9.決断思考
最終的にディベートをしたらどのようなスキルが身につくのか?決断思考を元に2つのゴールをご紹介します。
意思決定力
意思決定とは、何か大きなことを決断することです。経営の世界では「意志決定」とも言いますね。
世の中は情報社会です。インターネットを上手に活用できれば、私たちが求めている情報はすぐに手に入ります。
情報が足りなくて困っているよりは、選択肢が多すぎて何を選んだらよいかわからずに困っている方のほうが多いのではないでしょうか?
ディベートを学ぶと、ひとつの問題に対してプラス面とマイナス面の両方から考えて、そのひとつひとつを検証していきます。そして、最後にどちらを選ぶかを決めていきます。
例えば、これが会社の事業戦略で新規事業をはじめると仮定するとします。
その事業が「儲かるか?儲からないか?」で儲かる理由と儲からない理由を集めて、その事業を行うとして様々な展開を事前にシミュレーションしていきます。そして、最後に「する・しない」を決断していきます。
ディベートの試合もこれと同じです。
即決・即断ができる
これは即興ディベートならではの利点です。即興ディベートの場合は、事前にリサーチができないため、試合中は相手からどんな議論が飛んでくるか予想ができません。
そのため、先ほどの「聴く」「考える」「まとめる」「伝える」の4つの動作を物凄い速さで行っていきます。
その速さを作るのが、「即決・即断」です。
相手の主張に対して、
- どこに反論をするか?
- どのようにまとめていくか?
- どこで勝ちにいくか?
などを試合の中で反射的に考えて、そして決めて、決めたことを実行に移します。ディベートの場合は、それがスピーチです。
スピーチをどのようにまとめるか?どの言葉を使うか?などは、ほぼその場で決めていきます。もちろん、失敗をすることなんてたくさんありますが、そこらへんはPDCAサイクルを回しながら、次につなげています。
まとめ:ディベートは当たり前を当たり前に実行するだけ
最後まで読んでくださりありがとうございました。そして、もうひとつ。ディベートを通じて私が最も学べたことは、理屈だけで考えずに、まずは実践してみることです!現在、即興ディベートワークショップでは、講師や生徒のくくりなどを設けずに、まずはみんなで実践をしてみることをモットーとしています。