論理的傾聴-根拠、主張、論拠の3つで相手の思考を読み取りながら聴く方法
即興ディベートで身につく9つのスキルの記事でディベートでは、ディベートのスキルでいちばん大切なのは、何よりもまず「聴く」を徹底させることだ、とお伝えしました。
この記事では、ディベートにおける「聴く」とはどういう意味か?その点について解説をしていきたいと思います。
「論理的」とはどういう状態か?
論理的とは、話しに何らかの道筋がある状態を意味します。話の道筋を相手に理解してもらって、はじめて論理的だと判断されます。
逆に、話の道筋が見えない場合は、論理的だとは言えません。
典型的なのが、「あれも、これも、それも」とたくさんのことを話す人。内容が拡散してしまっているだけではなく「あれ」「これ」「それ」がつながっていないため論理的ではないと判断されます。
一方で、「あれがある→なぜならこれがあるから。→よって、そうだ!」とバラバラな話に道筋を作れる人は論理的だと思われます。
「もしかしたら私かも・・・」とへこましたら申し訳ございまん。
- 仮にそうでもひとまずご安心ください。このような話し方は訓練をして、論理を意識しながら話すことを習慣づければ誰でもできるようになります。
- 論理的でない話し方が決して悪いわけではありません。一度すべて伝えた後に、話した内容を整理できれば、次からは道筋を創って話せるようになります。
- 自称論理的な人も話がまとまらずテンパることはよくあります。大事なのは、自分が何を話して、相手にどのように伝わっているかを意識できるかです。
さて、ここからが本番です。
今回のテーマは、論理的に伝える!ではなく、論理的に「聴く」です。
私はディベート以外にも性格診断やアイディア引き出し・コーチやホームページ制作のコンサルを行っていますが、全てのクライアントがいわゆる“論理的”に話せるわけではありません。
また、私も他人に何らかの悩みや課題を相談するときに、いつも話がまとまっているわけではありません。むしろ、話が破綻していることのほうが多いかもしれません。(あとから気づいてすごく恥ずかしくなります)
たとえ相手の話が論理的でなくても、私たち(?)は、「聴く」を通して、相手の話が論理的にまとまるようにしていくことが求められます。もちろん、ただぼんやりと聴いていてもだめです。相手の話を聴きながら、所々で簡単な質問をして、相手の話に道筋を作っていきます。
いいえ。決してそんなことはありません。相手が話をしていて楽しければそれがいちばんです。
私の場合、お客様の多くが自身の課題を論理でまとめたり、目標達成までの道筋を論理的に作りたいと希望している方が多いためです。
自分が考えていることが論理で理解できることによって満足と感じるクライアントさんはたくさんいます。(行動しやすくなります)
根拠、主張、論拠の3つで聴く
- 根拠−客観的な事柄、事実、出来事
- 主張−がいちばん言いたい事、訴えいたい事
- 論拠−根拠が主張を支えていることを示す理由、理由付け
例をひとつお出しします。
仮想通貨で儲かった
あなたは久々に大学時代の友人に会いました。その友人は、去年仮想通貨の投資をはじめたら大儲けしたようです。言動を見る限り嘘はついていなさそうです。自身の武勇伝を語りながら、彼は「仮想通貨はいいよ!」とずっと繰り返していました。
はい、仮想通貨に興味がない人にとっては退屈な時間かもしれません。ですが、このような瞬間こそがあなたの「聴く力」を伸ばすチャンスにもなります。まずは、この友人の言いたいことを整理してみます。
- 根拠−友人は、仮想通貨で儲かった
- 主張−あなたもやってみなよ
- 論拠−去年の自分もできたのだから、あなたもできる
この手の話を聴くと、おそらく、本当に仮想通貨で儲かったのか?に焦点が向かうかもしれません。人によっては、「この人はウソをついているのではないか?」「話を盛っているのではないか?」などを考えてしまいがちです。
しかし、そのようなことを考えていても、答えはやっぱりわかりません。そこでお勧めしたいのは、根拠が正しいか正しくないかは置いておいて、主張や論拠に焦点を当ててみてください。その友人は、仮想通貨で儲かった話を通じてあなたに対して何らかの要求があるからです。
それが、「主張」や「論拠」です。
この友人がいちばん訴えたかったことは
実は、「仮想通貨が儲かった」ではありません。
- 「あなたもやってみなよ」
- 「私のことを認めてくれ」
のどちらかです。
1場合は、本人は口にこそしませんが、そのような要求があり、あなたを巻き込みたいわけです。
主要というのは突き詰めると、相手に対する要求であることがわかります。そして、その要求とは、現時点では実現されていないことです。だからこそ、要求をするのです。なぜそうだといえるのか?
それは、私自身が、この記事を書きながら、ディベート講座に参加をしてもらいたいという要求があるからです。広告も同じです。商品の購入やサービスの申し込みなど具体的なアクションが欲しいから行うのです。
しかし、本人たちは、あからさまにその要求を露骨に言葉にすることはできません。2の「私のことを認めてくれ」に限って言えば、本人すらも気づいていない場合があります。
聴く側の私たちは、そんな相手の隠れた要求を探りながら、相手の話を聴いていくことが求められます。
【質問方法】だから何?でOK
因みに、相手の要求を引き出す質問はカンタンです。
「だから何?(So What?」という質問をすればよいのです。
友人 仮想通貨で儲かった!以下、延々と武勇伝を話す
あなた なるほど。で、どうするの?(ウシジマくん風)
もちろん、いきなりこんな言い方をすると相手も気を悪くするので、これはNGです。ただ、だから何?(So What?)という視点をもって相手の話を聴けるようになると、相手が何を要求しているのだろうか?がだんだんと見えてきます。
さて、次です。
これが論理的傾聴の世界ではいちばん大事です。
論拠!根拠が主張を支えている理由
議論の世界では「根拠」については知っている方が多いかもしれませんが、論拠はあまり知られていません。ディベートワークショップでも、「根拠はわかるのですが、論拠がちょっと・・・」という質問をよく頂きます。
普段の生活ではあまり聞きませんからね。
論拠とは、言ってしまえば、「根拠が主張を支えている何らかの理由」です。根拠と主張をつなげる道筋のようなものです。
根拠 仮想通貨で儲かった!以下、延々と武勇伝を話す
主張:あなたもやってみなよ
だとします。この論理は、自分が儲かったのだから、あなたも儲かる!という理由によって支えられています。そして、これが必ずしも正しいとは言い切れないということです。なぜなら、本人すらも、自身の論拠に気づかず、その人の中の常識で話を進めている場合が多いからです。
相手がどんな論拠(常識や考え方)を持っているのかを探りながら聴いていくのは、論理的傾聴では最も大切です。これができないと相手の話の内容や勢いに飲まれてしまうからです。
だからこそ、相手がどんな論理を持っているのか?を注意深く聞いていく必要があります。
ディベートの試合でも、相手の論拠にまでアプローチができれば、相手に対して的確な反論ができるようになります。
ディベートの「聴く」とカウンセラーの「聴く」は一緒
あまり信じてもらえないと思います。なぜなら、カウンセラーは、相手の言葉に対して受容したり、共感するために「聴く」を徹底します。対して、ディベートの試合では相手の議論を通じて思考を読み取るために聴きます。
ディベートの場合、相手の議論を理解してからの反論があり、相手の話を崩しにかかります。そのため、真逆のようにとらえている方も多いのではないでしょうか?
しかし、「聴く」目的こそ違えど、根っこの部分は一緒だということです。
ディベートの試合でも、相手がどのような経験(根拠)を経て、何を訴えたいのか?(主張)。そして、どんな考えを持っているのか?(論拠)を聴いていくだけだからです。相手を理解するという点では何ら変わりません。
「いや、ディベートの場合は反論をするんでしょ!」と思うかもしれません。
であるなら、反論をしなければよいだけです。
反論の代わりに質問を繰り返しながら、相手の「根拠」「主張」「論拠」を掘り下げていくこともディベートの試合では求められます。
そこは伝え方の問題になりますが、ここも技術で補えます。