【具体例あり】トゥールミンモデル完全理解
ディベートで学べる論理についてもう少し掘り下げていきましょう。アカデミックディベートでは諸事情がありあまり使われていませんが、即興ディベートでは、このトゥールミンモデルをガンガンと使います。
これは即興ディベートというよりは、私があらゆることをトゥールミンモデルで考えているからです。
それはディベートに限らずにコーチングをしているときも。だからこそ、この記事では、トゥールミンモデルの中身とこのトゥールミンモデルをどのように日常に活かすのか?そこらへんも掘り下げて解説をしていきます。
前置きが長くなりました。失礼。
トゥールミンモデルはコチラのモデルです。
トゥールミンモデルは、「根拠」「主張」「論拠」「裏付け」「反証」「強度」の6つの論理パーツで構成されています。今回、最も注目してほしいのが「裏付け」「反証」「強度」の3つです。前半の、「根拠」「主張」「論拠」は基礎論理と呼ばれていて、その論理を検証するために、「裏付け」「反証」「強度」があります。
トゥールミンモデルの概念だけを説明しても抽象的過ぎてわかりずらいので、今回は具体例を用意しました。
具体例
日本のアニメ番組は子供の教育に悪影響である
このテーマを元にトゥールミンモデルの理解を深めていきましょう。
基本論理-根拠、主張、論拠
基本論理は、根拠、主張、論拠の3つで構成されています。意外と知られていませんが、実は根拠から考え始めるのがトゥールミンモデル攻略のポイントです。主張はその次です。
根拠とは?
根拠がない主張は成立しない?というのは議論の世界では鉄則のようなもの。一方で、根拠とは何か?といわれたら意外と答えられないもの。
主張:日本のアニメ番組は子供の教育に悪影響である
根拠:なぜなら、日本のアニメ番組にはいかがわしいシーンや残酷なシーンが多いからだ!
と論じたとします。一見、まともな根拠のように聞こえますが、実はこの根拠は一言で崩せます。
本当かよ?で一発
「本当にいかがわしいシーンは多いの?残虐なシーンって具体的に何?」と本当かどうかを質問されたら案外と答えられません。それ自体が個人の思い込みかもしれないからです。
今の若者はダラダラしている!けしからん!と叫ぶ人がいますが、これも同じ理屈が通ります。
本当に今の若者はダラダラしているのか?
何が言いたいかというと、根拠は客観的な内容でないと説得力がないということです。できれば事実を述べることが望ましいです。
事実に基く根拠づけ
根拠:なぜなら、日本のアニメ番組にはいかがわしいシーンや残酷なシーンが多いからだ!
の部分ですね。
例えば、このような論じ方をしたらどうでしょうか?
<根拠>
youtubeでワンピースの海外版を見ていたときに、サンジのたばこがキャンディーになっていた。ゾロが刀で敵をきるシーンで血が出なかった。日本のワンピースにはない補正が加えられていた。
と、このような説明だと、これ自体が事実なので誰からも否定されません。それはたとえ、相手があなたのことを嫌いであり、反論をしたくてうずうずしていても、この事実だけは覆せないわけです。
とにかく、
- 誰が聞いても反対されないことを述べる
- 事実がいちばん望ましい
事実かどうか不確かなら客観的に正しそうなこともあるかもしれません。また、お手元に裏付けるデータがない場合もあります。そんなときも、なるべく誰もが納得してくれそうな客観的な出来事を詳細に伝えることを意識してみてください。
主張とは?
根拠の弱点は、それ自体は受け入れてもらえますが、その先がないことです。
例えば、先ほどのこれですね。
<根拠>
youtubeでワンピースの海外版を見ていたときに、サンジのたばこがキャンディーになっていた。ゾロが刀で敵をきるシーンで血が出なかった。日本のワンピースにはない補正が加えられていた。
聞き手からしたら、「あ、そう。だから何?」なのです。だからこそ、その質問に答えていくのが「主張」の役割です。
今回のケースだと、海外のワンピースで補正が加えられていたのはわかったけれど、私たちはこの問題に対してどう向き合えばいいのか?という質問に対して答えないと、あなたの要求は通りません。
<主張>
日本でも子供向けのアニメの法規制を強化するべきだ!
とあなたが本当に言いたいことを主張します。改めて主張とは何か?と考えると、現時点では実現していないあなたの要求です。ポイントは、あなたが主張していることは現時点ではなしえていないということです。
- 「いじめ」は行けません
→いじめがあるから言える
- もっとみんなで協力し合うべきだよ
→協力していないから言える
- 仕事は大変だけれど頑張ろうよ
→応援しないと頑張らなくなる
インターネット−主にブログやSNS−でたくさん主張を投げる人がいますが、なぜこんなにも主張をするのか?というと、その人の中で主張している内容が実現していないと本人が認識しているからです。
哲学的にいうなら、主張は、その人の内側にあるのではなく、外側の世界にあるとも考えられます。
では、次は、論理のキモともいえる「論拠」です。
論拠とは?
論拠とは聞きなれないかもしれませんが、もうひとつの根拠のことです。根拠の役割が主張を支えているのなら、論拠はその根拠と主張の間を支えているもうひとつの柱になります。
先ほどの論理を検証していきましょう。
<根拠>
youtubeでワンピースの海外版を見ていたときに、サンジのたばこがキャンディーになっていた。ゾロが刀で敵をきるシーンで血が出なかった。日本のワンピースにはない補正が加えられていた。
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<主張>
日本でも子供向けのアニメの法規制を強化するべきだ!
いかがでしょうか?実は、この論理にはある別の考えが成立しています。
それは、日本は海外のやり方に見習うべきだ!という暗黙の前提ともいえる考えです。
仮に海外のアニメ番組で色々と規制がかかっていることが事実だとしても、なぜ日本が海外の真似をしてまで規制をかけなければならないのか?そこには、日本は海外の真似をするべきである!という暗黙の論理が働いているからです。そして、ディベートでは、この暗黙の前提を読み取っていくのが攻略のコツでもあります。
因みに、私たちのコミュニティーには驚くほど、この「論拠」が働いています。これを一般的に「常識」とも言います。よく「常識を疑え」という人がいますが、突き詰めるとこの論拠を疑ってみること、それ以前に探ってみることだとわかることでしょう。
論拠が正しいと立証するためにはどうしたらよいのか?
それがこれから説明をする応用論理です。
基本論理-根拠、主張、論拠
ディベートの教科書でもトゥールミンモデルの基本論理の部分までは解説されていますが、本当に大事なのはこの次の「応用論理」だと考えています。
応用論理-分析、反証、評価