「即興ディベート」は、その場で与えられたテーマについて議論を戦わせるゲームです。

ここでは、試合がどのように始まり、展開し、そして勝敗が決まるのか、その全流れを3つのパートに分けて徹底解説します。

第1部:準備時間

いきなりテーマが発表されて試合をするわけではなく、まずはテーマ決め、役割決定、作戦会議があります。

ステップ1:テーマ発表

まず、ディベートで議論するテーマ(論題)を決めます。

原則、ディベートのテーマはその場で決めます。だいたい、ニュースで騒がれているようなことをディベートのテーマに落とし込んで試合をしています。

その場で。

ステップ2:役割決定

テーマが決まったら「肯定側」「否定側」のどちらの立場に立つかを決めます。通常、コインやじゃんけんなど、ランダムな方法で決定します。

自分の意見とは全く逆の立場で議論することも、ディベートの醍醐味の一つです。

ステップ3:作戦会議(準備時間)

役割が決まったら、いよいよ作戦会議です。15分〜30分程度の限られた時間の中で、チームメンバーと協力し、スピーチの骨子となる議論を組み立てます。この準備時間で、いかに質の高い議論を構築できるかが、勝敗を分ける大きな鍵となります。

第2部:試合編|8つのパート

準備時間が終わると、いよいよ試合開始です。試合は以下の8つのスピーチパートを順番に行うことで進行します。

立論スピーチ

立論スピーチでは、お互いがテーマに基づいた議論を出します。肯定側であればテーマを肯定して、否定側であればテーマを否定します。なお、立論直後に相手サイドからの質問タイムがあります。

  1. 肯定側立論 役割:問題提起と計画の提示 現状の問題点を指摘し、「このテーマ(計画)を実行すれば、その問題が解決されて素晴らしい未来が訪れる」というメリットを最初にプレゼンします。
  2. 否定側質疑 役割:肯定側への質問と情報収集 肯定側の立論に対し、不明確な点や根拠が弱い部分を質問します。ここで得た情報を元に、後の反論を組み立てます。
  3. 否定側立論 役割:反論とデメリットの提示 肯定側の計画に反論し、「テーマを実行すると、かえって新たな問題(デメリット)が発生してしまう」と主張します。
  4. 肯定側質疑 役割:否定側への質問と情報収集 否定側の立論(デメリット)に対して質問し、弱点を探ります。また、両者の議論の食い違い(争点)を明確にします。

反駁スピーチ

反駁スピーチは原則お互いの立論の攻防戦です。相手の議論に対して反論を加えながら、自分の議論を守っていき、第三者に対していかに自分たちの議論のほうが相手の議論より優れているかをアピールします。

  1. 否定側第一反駁 役割:肯定側の議論への集中攻撃 最初に提示された肯定側の立論(メリット)に対して、具体的な反論を開始します。相手の議論の矛盾や欠点を指摘する攻撃のパートです。
  2. 肯定側第一反駁 役割:防御と反撃 試合で最も忙しいパートです。否定側のデメリットに反論しつつ、自分たちのメリットが相手の攻撃によって崩されていないことを証明(防御)します。
  3. 否定側第二反駁 役割:最終弁論(否定側) 否定側の最後のスピーチです。試合全体の議論をまとめ、「メリットよりもデメリットの方が大きい」ことを審判にアピールし、自分たちに投票すべき理由を述べます。
  4. 肯定側第二反駁 役割:最終弁論(肯定側) 試合を締めくくる最後のスピーチです。これまでの議論を全てまとめた上で、「デメリットを考慮しても、私たちのメリットは社会にとって必要だ」と審判を説得します。

以上がディベートの流れになります。各スピーチ時間は2分で、その間の準備時間が1分になります。よって、選手は1分でスピーチをまとめて、2人で話さなければなりません。

第3部:勝敗決着

8つのスピーチがすべて終わると、勝敗を決める「ジャッジメント」に移ります。

ジャッジの役割と判定基準

ディベートの勝敗は、第三者であるジャッジ(審判)によって決定されます。

ジャッジは、自身の個人的な意見や知識を一切挟まず、その試合の中で両チームが提示した議論だけを評価します。

どちらの意見が「正しいか」「共感したか」ではなく、「どちらがより説得力のある議論を展開したか」という基準で判定を下すのが最大のポイントです。

なお、ジャッジが考えているときは、選手は別の部屋に移動します。

議論の論理性、根拠の強さ、反論の的確さなどを総合的に評価し、より優れた議論を行ったチームに票を投じます。

判定後には、ジャッジから各チームへフィードバックが行われることがほとんどです。

勝敗の理由や、各スピーチの良かった点、改善すべき点などを具体的に解説してくれます。

このフィードバックこそが、ディベートを単なる勝ち負けのゲームで終わらせず、参加者の成長に繋げるための最も重要な時間です。

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